暇だからと居酒屋に呼ばれた。
順調に増えていく吸殻を見ながら同じく自分も火をつける。
客入りがそこそこの酒も扱う大衆食堂。安酒の飲めるほどよい空間。
足を崩して好きなものを思い思いに頼んでいる辺りで既に気を使うという概念はない。
別段特筆するような用件もなかったので同行したわけだが、サシの飲み席でここまで気兼ねなく話せる相手だとは思いもよらなかった。
「楽しい方がいいだろ、気を使うのも使われるのもヤだし」
洋酒の炭酸割りを傾けながら笑う相手にそれは真理だと同意する。
気を使わずに楽しめたらいいというのは理想だろうと現実に揉まれてきた身としては思うわけだ。
しかし残念ながら目の前の相手は自分よりも4年ほど多く生きている。
その考えを矯正せずにここまで来れた事に驚愕というか、一種の尊敬のようなものを覚えた。
理想だけでやっていくには些(いささ)か厳しすぎる世界だと考えて自分は当たり障りのない器用さを手に入れてしまったわけだが、貫き通せば形に出来たものもあるのかと素直に驚いた。
「それでよく騙されたりしないね?割と格好の餌食な気がするけど」
特に自分のように騙しで生きてきたタイプの人種の前では素直である事は危険だと思われる。ただでさえ小さな欠点を見つけてはねちっこく追求するのが人間というものなのに、それでも理想を貫くのは理解に苦しい。
個人的には戦場に全裸で行くようなものだと思う。
ひねくれているのは理解しているが、相手は少し考えた後いくつかの枝豆を頬張りながらケロッと言い放った。
「それでも、騙すよりは騙される方がいいな俺は」
「……」
ああ、コイツは基本的に馬鹿なんだろうなと。
何を言っても揺らがないのだろうと確信した。
呆れ半分と、清々しさ半分で すげーなと思った訳で。
単純な興味と気が抜けていたのもあってなんとなく聞いてみた。
「そーゆー奴ってどんな人を好きになんの?」
「あー…、あれだな気を使わなくて良くて楽しい奴」
聞いておいて言うことではないが、さほど興味もなかったので「ふーん」と流して自分のグラスを仰ぐ。氷が溶けて薄まっていたので次を頼もうとメニューを取ろうとしたところで向こうはそろそろ一箱終わるかくらいのタバコに火をつけていた。
「お前みたいな奴は好きだな」
唐突に落とされた言葉に一瞬思考を奪われたが、馬鹿のことなので「人として、主な代表例として」といった注釈が入るのだろうと解釈した。
「そりゃドーモ、あいにくと本気にならない自由人だからゴメンなー」
「まあ、しばらくはいらないがな」
「奇遇だな、同じく だよ」
そんな空気感を心地良いとも思ってメニューを見回す。
店員を呼べばすぐに若いバイトが対応してくれた。
通算何杯目かも覚えていないハイボールを自然に「濃いめで」と注文したのは、少しの気まぐれと酔いたい気分に浸っていただけなのかもしれない。
順調に増えていく吸殻を見ながら同じく自分も火をつける。
客入りがそこそこの酒も扱う大衆食堂。安酒の飲めるほどよい空間。
足を崩して好きなものを思い思いに頼んでいる辺りで既に気を使うという概念はない。
別段特筆するような用件もなかったので同行したわけだが、サシの飲み席でここまで気兼ねなく話せる相手だとは思いもよらなかった。
「楽しい方がいいだろ、気を使うのも使われるのもヤだし」
洋酒の炭酸割りを傾けながら笑う相手にそれは真理だと同意する。
気を使わずに楽しめたらいいというのは理想だろうと現実に揉まれてきた身としては思うわけだ。
しかし残念ながら目の前の相手は自分よりも4年ほど多く生きている。
その考えを矯正せずにここまで来れた事に驚愕というか、一種の尊敬のようなものを覚えた。
理想だけでやっていくには些(いささ)か厳しすぎる世界だと考えて自分は当たり障りのない器用さを手に入れてしまったわけだが、貫き通せば形に出来たものもあるのかと素直に驚いた。
「それでよく騙されたりしないね?割と格好の餌食な気がするけど」
特に自分のように騙しで生きてきたタイプの人種の前では素直である事は危険だと思われる。ただでさえ小さな欠点を見つけてはねちっこく追求するのが人間というものなのに、それでも理想を貫くのは理解に苦しい。
個人的には戦場に全裸で行くようなものだと思う。
ひねくれているのは理解しているが、相手は少し考えた後いくつかの枝豆を頬張りながらケロッと言い放った。
「それでも、騙すよりは騙される方がいいな俺は」
「……」
ああ、コイツは基本的に馬鹿なんだろうなと。
何を言っても揺らがないのだろうと確信した。
呆れ半分と、清々しさ半分で すげーなと思った訳で。
単純な興味と気が抜けていたのもあってなんとなく聞いてみた。
「そーゆー奴ってどんな人を好きになんの?」
「あー…、あれだな気を使わなくて良くて楽しい奴」
聞いておいて言うことではないが、さほど興味もなかったので「ふーん」と流して自分のグラスを仰ぐ。氷が溶けて薄まっていたので次を頼もうとメニューを取ろうとしたところで向こうはそろそろ一箱終わるかくらいのタバコに火をつけていた。
「お前みたいな奴は好きだな」
唐突に落とされた言葉に一瞬思考を奪われたが、馬鹿のことなので「人として、主な代表例として」といった注釈が入るのだろうと解釈した。
「そりゃドーモ、あいにくと本気にならない自由人だからゴメンなー」
「まあ、しばらくはいらないがな」
「奇遇だな、同じく だよ」
そんな空気感を心地良いとも思ってメニューを見回す。
店員を呼べばすぐに若いバイトが対応してくれた。
通算何杯目かも覚えていないハイボールを自然に「濃いめで」と注文したのは、少しの気まぐれと酔いたい気分に浸っていただけなのかもしれない。
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